愛する人を亡くして気づいたこと

父が亡くなる前に母に伝えたかった事は何だったのだろうか。言葉や態度で母への愛の表現はなかった父だが、本当に愛していたのだと思いました。

父の死

亡くなる前、父は母を一番心配していた。私に父は言っていた。「お母さんが心配するから、痛がっていることは言うな」と・・。

あるとき入院中に父が私に「俺が死んだらこれを葬式で流してほしい。」それはノートに書かれていた。
母への思いを綴った歌手・杉本まさとさんの「別れの日に」の歌詞だった。

振り向けば はるかな道を

おまえと 歩いてきた

ときには 泣かせたこともあった

許してほしい

 

いつかくる 別れの日には

おまえが しっかりして

みんなでこの俺 肴にして

酒を飲んでほしい

 

大した男じゃなかったけれど

静かにおまえを愛した

俺にしかない 歴史といえば

おまえと生きたことだけ

生きるのは ときにはつらく

なんにも 見えなくなる

それでも生きろと 子どもたちに

伝えてほしい

 

いつかくる 別れの日には

おまえは 時を止めて

みんなが帰った 家の中で

ひとり 泣いてほしい

 

大した男じゃなかったけれど

なんとかおまえと暮らした

俺にしかない 歴史といえば

おまえに逢えたことだけ

 

大した男じゃなかったけれど

静かにおまえを愛した

俺にしかない 歴史といえば

おまえと生きたことだけ

不器用な父が母に思っていたこと、そのものだと思った。
今思えば、父は自分に死が近づいていることをどう思っていたんだろうか?果たして死を受け入れていたんだろうか?
今になっては、わからないが、これだけは言える。父が母をどれだけ愛していたのかが。

父が入院して初めて母を心配していたことに気づいた。

よく言っていたのは「お母さんは、今お父さんのことでとても疲れきっている。それにお母さんの弟も癌で亡くしたばかりで精神的にもサポートしてやってくれ」と。

自分の心配よりも、母の事が一番だった。母も強くいようと懸命に父に接していたが、長年ふたり一緒にいてお互いがお互いの事をちゃんとわかっていた。

両親の世代は言わなくてもパートナーの気持ちを察するのが当たり前の時代だったが、それだけではない相手を思いやる気持ちがあったのだと思う。

出なければ相手の気持ちなんて理解できないと思う。

父が入院

父は生きる希望を捨てていなかった。そんな父を見ていて、強い人だと改めて思った。

親を亡くす

ずっと点滴のみで、食べることも飲むことも出来ずだったが、生きるために病院でできる限りスクワットをしたり、歩いたりと。

退院した時のために筋肉をつけておかなくちゃと毎日、ノートに書いていた。スクワットは何回出来て、体重は何キロかを。

一度父が「もう、家に帰れないかな。」と言っていたのが最初で最後の弱音だった。

ずっと最後の最後まであきらめていなかった。

病院で寝たきりになった時でもベットから身体だけは起こそうといつも頑張っていたのを思い出す。

私たちが帰った後、一人でどんな気持ちでいたんだろうか?

母や私たちに八つ当たりしたり一切ありませんでした。悲しい顔など見せませんでした。

父は自営業だったのですが、仕事の心配は常にしていました。

病院から外出許可をもらい一日だけ仕事をしに帰ったこともあったくらいでしたから、仕事大好きな父でした。

一日外出した時、初めて私は父が働く姿をしっかり見たような気がしました。

ふらつく体をしっかり踏ん張りながら、なんとかやり遂げた父はとてもカッコイイ職人の姿でした。

父との思い出

人生、自分らしく生きてきた父を尊敬しています。破天荒な父でしたが、母という最愛の人と出逢い、最高の夫婦になったのだと思います。

母は、今でも父の仏壇に向かっていろんな話をしているみたいです。

そして、夫婦はお互いに『思いやり』が一番大切だと再確認しました。

思いやり

お葬式は少数の親戚、友人であまり多くは来ないだろうと思っていたのだが、思った以上に父のために参列してくれました。後になってわかったことですが、いろいろな方が父との思いで話をしてくれ、父どれだけみんなに愛されて、こんなに信頼されていたんだと。

こんなに素敵な人たちに囲まれて、逝けたことに父は今喜んでいるでしょう。そう思います。「愛する人が亡くなって初めて気づく」もっと父とたくさん話をしておけばよかった。と後悔しています。義理の母や私の母をもっと大切にしたいと思います。

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